千代田区麹町・創業100年以上のうなぎの老舗【うなぎ秋本】
〆をまでいける店で飲むというのは、いい大人になってからの飲み方ですが、中でも最も贅沢な〆はうな丼だと思います。最高の〆のために、今回ミシュラン一つ星を4年連続獲得したこともあり、明治後期に創業し、100年以上の歴史を持つこちら「うなぎ秋本」で、ちょっと恐れ多くも「鰻屋飲み」です。
高級感あふれる佇まいは情緒ある数寄屋造り。少し構えて入りましたが、丁寧で柔らかい接客に緊張も和らぎます。席に落ち着いて、早速鰻屋定番のおつまみで乾杯です。
鰻屋でおつまみといえば、まずはうざく。さすがにこちらのうざくは見た目にも上品で美しく、甘みや酸味の加減が絶妙です。
きも焼もありますが、心惹かれたうなぎ肝の山椒煮をチョイス。ほんのり苦みと山椒の香りがビールに抜群にあいます。
前の二つに比べ、こちらは鰻屋はもちろん、他ではなかなかお目にかかれないおつまみです。見た目はイカの塩辛のようですが、「シマメの肝和え」というもの。メニューにはシマメ(スルメイカ)と表記してあり、島根県隠岐島の郷土料理に由来するようです。塩辛の様に発酵はさせず、新鮮でないと食べられない一品です。
少し遅れて鰻巻(うまき)が登場です。これも見た目が美しく、鰻はもちろん玉子焼もおいしい。鰻と玉子の組み合わせを考えた人が偉いのだと思いますが、こちらの鰻巻は是非とも食べるべきです。
さて鰻屋飲みのメインのつまみ、白焼の焼き上がりです。表面は香ばしく、身は本当に柔らかく仕上がっています。
箸で持ち上げようとしても少し力を入れるとほろりと崩れるので、繊細にやさしくつまみ、わさびをのせ、醤油でいただきます。
さあいよいよメインイベントかつ〆のうな重です。こちらのうな重は基本的に別盛で提供されます。贅沢にかば焼きもつまみにしながら、〆に向かいます。
ちなみにうな重は鶴がもっとも鰻が多く、次いで梅、竹、松の順になります。松竹梅の部分はなぜか順序が逆です。
こちらには通常のうな重とは別に「特選 共水うなぎ」のうな重があります。メニューの説明に大井川の伏流水を豊富に使い、通常の2倍の期間飼育したとあります。共水というのは養殖企業の名前だそうですが、養殖の鰻でありながら、疑似四季飼育をするなど、天然鰻に近い味と香り、脂を持つというブランド鰻だそうです。
こちらは身も厚いのですが、驚くほど柔らかです。そのままでも十分おいしいですが、タレが用意されており、ごはんにかけるなり、うなぎにかけるなりして好みでいただけます。たれは甘めではあるのですが、口に残るような甘さではなく、醤油を感じながらとてもまろやかな、うまく表現できませんが、抜群のバランスの本当に旨いたれです。
鰻の美味しさは、言うまでもなくうなぎの品質とその調理技術、そしてタレにかかっています。うなぎは直仕入れをされており、生産地にも足を運ばれているそうです。生きたまま運ばれてくる鰻にはどうしてもストレスがかかるたため、半日~1日休ませてから調理するとのこと。捌き始めるとどんどん鮮度が落ちていくので、手早く調理し、お客様にいいタイミングで提供するよう心掛けているそうです。
ランチ時にはある程度お客様を見越して、いい状態の鰻をあまり待たずに食べていただけるよう努めているという姿勢は、老舗でありながら柔軟に対応されているため、100年以上経った今も、人気店の地位を築いているのだと納得しました。
たれは創業時から継ぎ足しているそうです。麹町界隈は、江戸時代にお屋敷が立ち並んだ場所で、明治以降も食通が集まるような土地柄だったようで、こちらはそこで評判を得ていたいわば高級店だったようで、創業時はかば焼きだけの提供だったようです。ご飯の上におかずを載せるスタイルは、庶民には人気だったようですが、老舗の名店ではなじまなかったようで、親子丼の発祥といわれているお店でも同様のエピソードがあります。別盛の提供のスタイルは、その名残なのかもしれません。
うなぎ秋本
東京都千代田区麹町3-4-4
03-3261-6762
日祝・第2土曜定休
11:30~14:30(LO14:00)/17:00~20:30(LO20:00)
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この記事へのコメント
東京育ちなので、やはり食事は江戸前が落ち着きます。
うらやましいです。